あなたみたい

「すごい!外真っ白!!」
子供が喜び叫ぶような声が家に響いた。
朝から騒々しい。
そう思いながらも、ヴィッターは静かに目を開けた。
「・・・・・・静かにしてくれ」
と、いうか元気だな。
そう言いながら彼は体を起こす。
“妻”の姿はない・・・・・・恐らく居間だろう。
溜息を吐きながら男は居間へ向かった。

「あら、おはようございます。あなた」
「キミはティラミスと同じか」
外の雪にそんなに目を輝かせて。
そんなに嬉しいのか、雪が。
「あなたは嫌いですか?」
そう言いながら熱いコーヒーのカップを出した。
「いや・・・雪の日は音が響かなくて良い」
そう言って、一口一口確かめるように男はカップに口付ける。
フラウスはそれを見届け、台所に向かい朝食の支度を始めた。
パンを焼き卵をフライパンに落とす。
「おい、塩かけすぎだ」
居間から男の声が飛ぶ。
「大丈夫ですよ、なぁティラミス」
「大丈夫じゃない」
そもそも自分でかけたのだから大丈夫なのは当り前であろう。
フラウスの足元にいたティラミスがわんと一声鳴いた。
「ティラミスの裏切り者!」
言葉とは裏腹に少し楽しそうに、焼き上がった目玉焼きを皿に盛った。

「あなた!ほらほら来て!!」
居間にて新聞を読んでいたヴィッターは外からの声に顔を上げた。
声からしてフラウスのようだ。
「なんだ?」
何かあったのか?
だが、フラウスからの返答はない。
立ち上がり窓を開け外を覗いてみる。
北方の冷たい風が彼の額を撫でた。
ヒャンヒャンという犬の鳴き声と彼女の楽しげな声が聞こえる。
「あなた!来て!」
フラウスがヴィッターに気付き声をかける。
惚れた弱みか、彼女の笑顔には弱い。
しょうがないとばかりに男も玄関へと足を向けた。
雪の反射による光で目が痛い。
その中でティラミスは嬉しそうに駆け回っていた。
「あなた、こっち」
フラウスが手招きをする。
その瞳はまるで子供のそれのようにきらきらと輝いていた。
「何があるんだ?」
不思議に思いながらそちらへ向かう。
「頑張って作っちゃった」
そう言って指さした先にあったのは、かまくら。
小さめではあるが、一人で作るとなると結構骨だ。
「大変だったんじゃないのか?」
「いいえ?
中は暖かいのよ・・・・・・まるであなたみたい」
ふいの言葉に思わずヴィッターは彼女の顔を見返した。
それにフラウスはふっと笑った。
「でも、やっぱり疲れたみたいです。
もう中で休みますね・・・あなた」
「あ、ああ」
思わず出てしまった素の言葉。
ヴィッターが答えると彼女は柔らかな笑顔を浮かべた。


気付いたら結構な重労働をさせてしまった・・・・・・
雪はコールドですしイメージ的に合う気がします。
雪の下には黒土があると思うと、殊に(爆)

inserted by FC2 system