星を知らない目

皆で砂漠の空を見上げた時のことだった。
「ムワリム!
流れ星が出たぞ!
ちゃんと願い事言えたか?!」
少し離れた所で首領の声がする。
流れ星が流れたというが、私には・・・・・・見えない。
「いいえ・・・残念ながら。
坊ちゃんは何か言えました?」
「おう、全っ部のラグズ奴隷が自由になれるようにってさ・・・って
ビーゼ、どうした?」
何も言わない私を不審に思ったのだろう、首領の声が近づいた。
「何も、見えなくて」
鳥翼の目は、残念ながら闇夜でよく見えるようにはできていない。
だから、流れ星が出たとかあの星座がどうだとか・・・月でさえも朧げに見えるだけで。
私の目は、星を知らない目だった。
「そっかぁ・・・星ってのは、空で光ってる沢山の点で・・・・・・」
「それくらい知ってます」
知識としてなら。
「じゃあ・・・太陽の光を反射していて・・・・・・」
「何処にも太陽なんかないじゃないですか」
辺り一面真っ暗闇。
「じゃあ・・・もう!
星ってのは・・・・・・」
そう言って首領は何か懐から取り出したようだった。
何やら呪文を唱えている。
「・・・こんなんだよ」
「・・・・・・・・・・・・凄い」
小さな無数の火球が宙に浮かんでいた・・・話に聞いた、星のように。
「精霊の力、ですか」
ムワリムさんの声だ。
「ん?
そうだな。
本当はこういうアレンジとかおいらには無理なんだけど
前にダニエルに練成してもらった奴あったから」
首領には、魔道の才能がない。
でも・・・・・・
「どうしたんだよ、ビーゼ。
泣いてんのか?」
それでも、こんな私のために一所懸命になってくれる。
「首領」
「なんだ?」
「綺麗です、星」
私の目は星を知らない。
けれど、その輝きは知っている。
それは道を照らす炎に似ていた。

これはトパビゼなのでしょうか。
漫画のRomanを読んだ勢いで書いたお話でした。
原曲も素敵ですよね!(にわかファンですが)
トパ坊はごく普通の人だと思います。
でも、誰かのために頑張る。その一点だけは誰にも負けていなくて・・・そこがラグズを惹きつけるのではないでしょうか?

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