年上のお姉さん

デイン人の捕虜を助け出した戦い後、ジルは一人でいた。
そこに赤毛の青年が駆けて来る。
「ジルー!」
「トパック?」
彼女の元にトパックがもの凄い勢いで駆け込んで来た。
元々彼はとても足が速い。
だから、あっという間にジルの隣まで来てしまった。
「あ〜、疲れた!」
「大丈夫?
水とか持って来る?」
心配そうにジルが言うが、トパックはそれを断った。
「いいよ、別に。
それよりジルさっき言いかけてたじゃん。
何かな〜?って」
無邪気にトパックが笑う。
3年前から、彼は何も変わっていなかった。
いや、多少身長も伸びたし一人称も変わってはいたが。
「ううん、デインに来た理由を聞きたかっただけだから。
もう聞いたわ・・・・・・助けに来てくれたのよね」
神使たるサナキが動いているなら、この国はきっと大丈夫だろう。
希望の光が、集まって行く・・・・・・
「おう!
頼りにしてくれよな!」
「ふふ・・・・・・あ・・・」
ジルがトパックを頭に手を置く。
「な、なんだよ」
心なしかトパックの顔が赤い。
「トパック・・・おでこ怪我してる・・・・・・」
「え?嘘?!
うわ・・・気付かなかった・・・・・・」
でこじゃ唾つけらんねぇなぁと言っているトパックの横で
ジルはごそごそと荷物の中を探す。
そして、目的の物を見つけるとそれをトパックのおでこに塗りつけた。
「良かった・・・薬、残ってて・・・」
優しく薬を塗ってやる。
「ジル、この薬少し染みない?」
「わがまま言わないの」
小さい頃、良く転んだら塗ってもらってたな・・・とジルは幼少の頃を思い出した。
それが顔に出て、笑顔になっていたのだろう。
トパックは面白くなさそうに「どうせ子供っぽいとか言うんだろ」とブツブツ言っている。
「そうじゃないわ。
ただ、昔を思い出しただけよ」
この赤毛の青年が幼い自分と重なった。
・・・相手に聞かせたら怒りそうだが。
「ふ〜〜ん・・・まぁ、いいや。
ジル、ありがと」
「どういたしまして」
微笑むジル。
そんな彼女を見てトパックがぽつりと呟いた。
「ジルって・・・姉ちゃんみたいだな」
「え・・・?」
ジルはきょとんとして言った。
お姉ちゃん?
私が?
「おれ、きょうだい居ないけど
きっと、姉ちゃんがいたらこんなんなんだろうな!」
トパックがへへ・・・と笑う。
「私も・・・・・・トパックみたいな弟がいたら、嬉しいな」
「頼りになる弟が出来て良かったな!
ジル姉ちゃん!!」
そこで、二人は顔を見合わせてお互いに笑いあった。


実は、これを書いた後になんやかんやあり(なんやかんやって何)、そんなこともあって思い出深い作品です。
ジルとトパ坊のコンビは本当に姉弟みたいな関係が良いと思います。
二人とも(多分)一人っ子で、ムワさんとかハールさんとかはお兄ちゃんって感じじゃないし仲は良さそうです。 inserted by FC2 system