ずっと言えなかったこと

クリミアの片隅にある小さな村。
その村のまたはずれにある古びた家。
「母さん、はいカーネーション」
「ありがとう・・・・・・ヘザー。
ごめんね、いつも苦労かけて」
ベッドの上の母は赤いカーネーションを喜びながらも、暗い表情を浮かべた。
「いいのよ、母さん。
私母さんの子供で良かった、って思ってるから・・・・・・」
偽りのない言葉。
母のためなら・・・なんでもできる。
「・・・・・・ねぇ、母さん」
「なぁに?ヘザー」
珍しく神妙な面持ちの娘。
次の言葉を待つように母は、娘の顔を見つめた。
「私ね、どろぼうなの」
突然の、告白。
「ずっと母さんを騙してた。
メリオルで働いてるっていうのも嘘。
ずっと、ずっとずっと母さんのこと騙ししてた!」
次第に早口になる娘。
罪悪感がそうさせるのか、時間よ早く過ぎ去れと。
ふと、ウェーブのかかった金髪の彼女の頭に優しい手が添えられた。
「知っていたわ。
・・・・・・ずっと、辛かったのよね」
暖かな微笑。
「だから、泣かないの。
ヘザー」
「かぁ、さん・・・・・・」
途端に涙が溢れた。
母の優しい顔が、歪む。
「ごめんね、ごめんね、ごめんなさい・・・・・・!」
「・・・もう、泣き虫なんだから」
子供ように、彼女は、ずっと泣いていた。

それから、“盗賊”ヘザーは消えた。


ヘザーさんがあれだけ想っているお母さんだから、きっと優しい人なのだろうと思います。
一度も話題に上がらないお父さんはどうなんでしょうね。母子家庭なのでしょうか?
ヘザーさんのお母さんの病気が早く良くなりますように。 inserted by FC2 system