夢の続きを・・・

世界に女神の裁きが下り、人々の多くは物言わぬ石像となってしまった世界に
しかしそれでも未だ活動する者たちがいた。
彼らは隊を三つに別け、それぞれ帝都シエネにある導きの塔を目指す。
何よりも、自分たちが生きるために。

「ペレアス、私のペレアス・・・・・・何処にいるの・・・・・・?!」
ペレアスの耳に女の声が聞こえた。
彼の母――――アムリタの声だ。
ゴルドアの黒竜王の娘、一応ペレアスの母親だということになっている。
一応というのは、青年の中に疑念が生まれたからだ。
前王アシュナードの后がアムリタで、彼女がラグズならば
ペレアスは『印付き』と呼ばれる存在でなくばならないのだ。
けれど、彼はごくごく普通のベオクである。
つまり・・・・・・それは、二人の間に何もないことを示していて。
遠ざかって行く母の声に青年はほっと胸を撫で下ろす。
アムリタが自分の本当の母親でないのではないだろうか
と、いう思いを抱いてから素直にアムリタを受け入れることが出来なっていた。
血も繋がっていない赤の他人に
知らなかったとはいえ彼女を騙していた自分に優しくしないで欲しかった。
あんなにも親子として愛してもらったのに、自分は彼女を傷つけてしまう。
「・・・・・・すみません、母上」
無性に一人になりたくなって、ペレアスは一人隊を離れていった。

薄暗い森は、ペレアスの周囲を静寂で包む。
ふぅ、とペレアスは息を吐いた。
アムリタがラグズだと知ってから、自分は誰なんだろうとよく思う。
そして、アムリタが真実を知ったら―――・・・とも。
再びペレアスがため息を吐いた時、少し離れた処で光が生じ金色の鎧や服に身を包んだ集団が現れる。
一目見れば忘れない。
女神アスタルテの僕、自分たちの・・・・・・敵。
「・・・・・・!
正の、使徒・・・・・・!!」
咄嗟に彼は懐の闇の魔道書に手を伸ばした。
一対多数、その上彼は戦闘経験が少ない。
戦況ははてしなく不利だと言わざるを得ないだろう。
ペレアスはただ一人、ピンチに立たされていた。

一方、本隊にも正の使徒は現われていた。
「女神アスタルテに仇なす不埒者に制裁を与えよ!!」
敵が叫ぶ。
その乱戦の中でアムリタは未だペレアスを探し続けていた。
「ペレアス!ペレアス!
私の、可愛いペレアス・・・・・・!」
必死になって呼んでも、返事はなく虚しさだけが心に湧き起こる。
その時、彼女に向って敵が斧を振り上げてきた。
アムリタは気付いていない。
「アムリタ様!危ない!」
空から声が降る。
と同時に彼女に武器を向けた男が倒れこんだ。
その体にはクリミア王家に伝わる剣、アミーテの刃が喰い込んでいる。
「アムリタ様、ここは危険です!
どうか後方へ」
エリンシアだ。
「でも・・・・・・ペレアスが・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・ペレアス王は、私が探します。
さ、早く後方へ」
その言葉にしぶしぶ後ろに下がるアムリタを見送り、エリンシアは天馬を空高く羽ばたかせた。

一体どれだけ倒したのだろう。
ペレアスはふらつきそうになる体に樹木を支えて、どうにか、という所だった。
まだまだ彼は戦闘に慣れていない故体力の消耗が激しい。
隊からそれほど離れた覚えはないが、恐らく向こう側にも敵は現われただろう。
援軍は・・・・・・望めそうになかった。
己を守ってくれる者は、誰もいない。
「く・・・・・・」
極度の疲労で集中力が薄れた時、敵のスナイパーが一本の矢を放った。
「!!」
気付いた時にはもう遅い。
間に合わない・・・・・・彼は、そう思った。
「(これが最期なら、もう一度母上に会って謝りたかった・・・)」
諦めが体中を支配しかけたその時、何者かが青年を押した。
何が起きたか頭がついていかない。
押されるがまま地面に転がりながらもなんとか反撃し、倒す。
次の瞬間、女の悲鳴が耳に刺さった。
振り返れば黒衣の女、誰よりも優しく自分に接してくれた・・・・・・
「母上!?」
何故、ここに。
疑問は膨らむ一方だが、彼女の肩からは赤黒い血がどくどくと流れている。
猶予はないように思われた。
「声、聞こえて・・・来たから・・・・・・
ペレ、アス・・・・・・へ、いき?」
「大丈夫です!
母上がかばってくれたから!!」
だからもう喋らないで!
何か薬になるようなものがないか荷物を手当たり次第に漁る。
「そう・・・・・・・・・・・・良か、った」
弱々しいアムリタの声、けれどそこに優しさが滲み出ていて。
「あった・・・!」
やっと見付けた薬を傷口に塗りつける。
矢は無理に引き抜けば出血が酷くなりそうなのでそのままだ。
「どうして・・・・・・僕なんかをかばって・・・・・・!?」
つい口から飛び出した問い。
それに彼女は寂しそうに答えた。
「私の、可愛いペレアス・・・・・・
“なんか”だなん・・・て言わ、ないで
あなたは・・・・・・私の、たい・・・せつな・・・・・・」
目頭が熱くなり、優しい母の顔が歪む。
「母上・・・・・・」
「泣か、ないで
私はへい、きだから」
痛みに歪むそれを無理やり笑顔に形作る。
辛いだろうに、苦しいだろうに・・・・・・ただ息子のために。
そんな母のため、マントを裂き作った布を宛がってみらりしても
傷口から流れ出る、赤。
今は、魔道書も何の役に立ちやしない。
ここに癒しの手を持つ暁の巫女がいたならば、アムリタを救えるのに。
いや、それでなくとも自分に聖杖が扱うことができれば。
「僕は・・・・・・無力だ」
所詮無いものねだり。
そして、ここに来てやっとわかった。
血など関係なかったのだ。
血縁があろうと、なかろうと此処までに築き上げてきた信頼は揺らがない。
それほどまでに、母を助けたいと心の底から彼は願った。
「い、え・・・あなたは、無力なんかじゃ、ない、わ」
「え?」
「私の、ペレアス・・・・・・優しい、子」
まだ温かさを保っている母の掌が息子の頬に触れた。

「デイン王に怪我はねぇ、か」
ティバーンが呟いた。
すぐ傍ではエリンシアがアムリタに治療を施している。
杖の先から放たれる聖なる光、それと共に彼女の顔に生気がみなぎってくる。
とはいえ、その瞳は閉ざされていた。
あれからすぐに戦闘は終了したうようで、鷹王以下数人がやって来た。
そこで安心したのか彼女は意識を手放したのだ。
「お前の単独行動がこういう結果を生んだ」
ペレアスに向き合ったティバーンが彼を見下ろす。
「・・・・・・はい」
「・・・・・・今度から気を付けろ。
母親をこんな目にあわせたくないならな」
彼の重々しい返答に反省の意を読み取ったのか、鷹の王はそれ以上何も言わなかった。
やがて治療も終わり拠点に戻る段となった。
アムリタを抱え先に行った鷹王たちに追いつこうと天馬に騎乗したエリンシアを呼びとめる声があった。
「ペレアス王・・・どうか、されましたか?」
「クリミア女王、あの・・・」
エリンシアがクスリと笑い、名前で良いと言う。
「じゃあ・・・・・・エリンシア女王、母をありがとうございました」
深く頭を下げるペレアスにエリンシアは戸惑う。
仮にも彼は一国の王。
軽々しく頭を下げるものではない。
「頭をあげてください。
そんなこと、困ります・・・・・・」
「いえ、まだ頼みたいこともありますから」
次の瞬間、ペレアスが顔を上げた。
その目に必死の色が見える。
「僕に・・・・・・杖の扱いを教えていただけませんか?」
もう誰も傷つけない。
あんな思いなんかもうたくさんだ。
「はい、もちろんです」
エリンシアもかつては思ったものだ。
自分は、なんて無力な存在なのだと。
「上手く、教えられるかわかりませんが」
「は、はいっ!
よろしくお願いします!」
それからペレアスはまた深く頭を下げた。

彼が天幕に入るとアムリタは寝台の上でぐっすりと眠っていた。
もう傷も痛まないのか、顔色も良さそうだ。
「母上」
ペレアスはあることを決意していた。
それは、少なくともこの戦いを終えるまでは息子としてアムリタを支えること。
自分を息子と信じるアムリタに夢の続きを見せてあげること。
「(・・・・・・いや、違うな。
本当は、僕が夢の続きを見ていたいんだ・・・・・・)」
相手のためと言いつつ、その実自分のためだ。
本当はとても嬉しかった。
自分を見詰める優しげで温かな母の瞳と言葉が。
「ペレ・・・・・・アス・・・・・・・・・・・・」
「母上?」
「・・・・・・」
寝言だったのだろうか?
返事がない。
ペレアスはアムリタの眠る寝台の隣に椅子を引き寄せ坐り、聞こえていないだろうと思いながらも口を開いた。
「母上、僕はずっとあなたの傍にいます。
だから・・・・・・ずっと、元気でいてください」
その言葉にアムリタの顔が少し綻んだような気がした。
「ペレアス・・・・・・私の優しい、自慢の子・・・・・・・・・・・・」


ぺ様が強くなろうと思ったきっかけの一つ。
アムリタ様はぺ様への愛情が深すぎて色々トラぶってそうですが、その愛情は間違いなく本物でしょう。
だからぺ様もその想いを応えたいと思う反面、母親が事実を知った時騙されたと思うだろうか?とか思ってると思います。
でも、血の繋がりがなくてもこの絆はきっと本物です。



注意
↓におまけがありますが、私はアムリタ様を激しく誤解しています。
記号や顔文字なんかがちょくちょく出てきます。



















夢の続きを・・・ 異聞 悪夢の続きを・・・

一体どれだけ倒したのだろう。
ペレアスはふらつきそうになる体に樹木を支えて、どうにか、という所だった。
まだまだ彼は戦闘に慣れていない故体力の消耗が激しい。
隊からそれほど離れた覚えはないが、恐らく向こう側にも敵は現われただろう。
援軍は・・・・・・望めそうになかった。
己を守ってくれる者は、誰もいない。
「く・・・・・・」
極度の疲労で集中力が薄れた時、敵のスナイパーが一本の矢を放った。
「!!・・・・・・?」
矢は、飛んで来なかった。
恐る恐る前を見るとその矢をアムリタが掴んでいた!
「ふん、こんな矢止まって見えるわ!」
ずかずかとスナイパーに近づき強烈なパンチを顔に喰らわせる。
会心の一撃だ。
「怨怒霊ぇー!
うちのぺー君に何すんじゃぁああ!!」
本能的に自分たちでは敵わないと悟りつつ武器をかまえる使徒と唖然とするペレアス。
「は、母上?!」
「ぺー君、もう大丈夫だからねぇv」
と、言うが早いか武器レベル 打:SSSSS(ry)で殴り飛ばしていくアムリタ。
ウォーリアのつうこんのいちげき
ウォーリアのこうげきをアムリタはひらりとかわした
アムリタのかいしんのいちげき
ウォーリアに9999のダメージ
ウォーリアはたおれた
「・・・・・・」
どこぞのゲームの天空の勇者を探す27レベル最強父ちゃんだってこんなに強くなかった・・・・・・
「い、いつもの母上じゃない(涙目(((゜д゜;)))))ガタガタブルブル」
最後の敵に頭突きを喰らわせ、ものの30秒で敵を殲滅する母。
「怪我はない?ぺー君」
「血!母上!血が!!」
「大丈夫よ・・・・・・返り血だから♪」
「ひぃぃ・・・・・・」
バタッ★
「ど、どうしたのぺー君!口からアワが出てるわ!
誰か!誰か私のぺー君を助けて!!」
そこへやって来る鷹王以下略。

その晩、ペレアスはずっと悪夢でうなされた。

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