New year call

Brrring,Brrring,Brrring・・・
今年最後の夜、アパートにけたたましい程の音が響く。
リザは溜め息を吐きながら電話を取るために立ち上がった。
一体このような真夜中に、誰が、どのような用件なのか甚だ疑問ではあるがこのままでは近所迷惑である。
「・・・・・・もしもし、どなたでしょうか?」
『私だ』
電話の奥から聞こえてきたのは、聞き間違える筈もない男の声。
少しだけ、その声が嬉しい。
「こんな夜中に何の御用ですか?」
『いや、もうすぐ新年だからね。
君の声が聞きたくて』
笑いながらそう言った彼の声に、女は呆れたように溜め気を吐いた。
「なんですか、それは。
まだ10分も時間がありますよ」
『いいじゃないか。
今年は色々ありすぎて・・・ゆっくり君の顔を見ることもできなくなってしまった』
それは、こちらも同じこと。
けれどもリザはそれをおくびにも出さなかった。
「春になったら、嫌って言うほど見せてあげますよ」
『ははは・・・楽しみにしているよ。
・・・年が明けたら、軍も忙しくなるな』
「そうですね。
最近物騒ですから」
引き寄せて来た椅子に深く坐りこむ。
今夜は長くなりそうだ。
『君は平気かい?
また変な男に付き纏われてないか?』
「ええ、大総統のお陰でまだ早いうちから帰れますし、銃もありますから」
『・・・・・・聞かなきゃよかった』
本気で凹んだような声に思わず笑ってしまう。
本当に、この男は昔からそうだった。
「やればできるのにやらないからです」
『じゃあ、今からでもせいぜい仕事に打ち込むとするか。
あまり他の男と比べられても嬉しくないからな』
「是非そうしてください」
リザの応えに電話口の向こうから彼の苦笑いが聞こえる。
顔が見えなくてもわかる。
男がどのように笑っているのか。
「・・・もうすぐ、今年も終わりですよ」
『お、もうそんな時間か』
時計を見るとあともう一分、という所だ。
『去年の年越しは執務室で君と二人だったな』
「もう、ずっと前のことみたいですね」
振り返った道は、とてつもなく、長い。
『そうだな。
来年は、一緒に外にでも出ようか』
「来年の話をすると鬼が笑いますよ」
『そうか・・・まずは目の前のことを片すか。
ほら、あと少しだ10、9・・・』
カウントダウンの声が近く感じる。
「・・・7、6・・・」
『・・・2、1。
・・・・・・あけましておめでとう、中尉』
「こちらこそ、あけましておめでとうございます。
今年も、よろしくお願いします」
『こちらこそ、頼んだよ。
どうも君がいない生活に慣れそうにない』
冗談なのか、本気なのか判断しかねる台詞だ。
「慣れて頂かないと困ります。
まったく、本当に」
本当に仕方のない。
『はぁ・・・でも、まぁ君の声が聞けてよかったよ。
寝ていなくて良かった』
「例え寝ていていても起きてしまいすよ、ずっと鳴らしているんですから」
『はは・・・そうだな。
悪かった。
わがままに付き合せてしまったな』
「そんな今更な。
まだベッドに入る前でしたし大丈夫です」
それに、気持ちはこちらも一緒だ。
口に出したら、照れてしまうけれども。
「・・・もう寝ますので電話切りますよ」
『ん・・・悪かったね、真夜中に』
「いえ」
寂しそうな声色にそれでも立ち上がる。
惜しくない、と言えば嘘になるけれど。
「・・・では、また、大佐」
ガチャリと受話器を置き、椅子を片付ける。
久し振りに聞いた声はいつも直接聞いていた声とは少し違って聞こえた。
いつだって傍にいて、共に過ごしてきたのに離れてみると・・・存外寂しいものだ。
「・・・慣れないのは、どっちかしら」
もう今夜は眠ってしまおう。
今年は、また、忙しくなる。
最後に聞いた男の声を忘れぬうちに、彼女はベッドに潜り込んだ。


BGMに『勇者の挑戦』を流しながら書きました。
どんだけゾーマ好きなんだ自分。
イメージ的には空白の3カ月(笑)ですね。
上手く書けたでしょうかね・・・いつも作品書いた時は不安です。
ロイアイ大好きなのになかなか文章書けませんが、少しずつでも形にしていきたいです。

inserted by FC2 system