守ってあげたい

「姫様っ!・・・姫様?」
クリフトがアリーナの部屋に入るとそこには誰もいなかった。
壁に穴が開けられた様子はないから脱走した訳ではないだろう。
ただその部屋には静寂だけがあって、いつものアリーナの部屋ではないようで。
まるで、かつてのサントハイムに来てしまったようなそんな感覚に囚われた。
あの、城の皆が消え失せてしまった・・・
呼ぶ者はなく、呼ばれる者もなく。
ただ、その空間に、自分一人のような。
彼は慌ててアリーナの部屋を出た。

「クリフト、アリーナ様はいらしたか?」
階下で彼女を探しているのだろうブライとかちあった。
「・・・ブライ様、いえ。
どこかへ出かけていらしてるんでしょうか」
「そんなはずはないが・・・
また習い事をさぼって・・・ぶつぶつ」
「あっ・・・ブライ様・・・」
クリフトの声は聞こえなかったのか、ブライの姿は奥に消えた。

クリフトは城に出てみた。
鳥が鳴いていて、人の気配が城の中から外から溢れている。
大丈夫、一人ではない。
そう改めて思った時、頭の上から呼ぶ声が聞こえた。
なんだろう。
そう思いながら見上げると・・・
「ひ、姫様!?」
驚くのも当たり前・・・いや、この姫君に限れば想定内かもしれないが・・・
庭にある一際大きな木。
その上にアリーナはいた。
「クリフトも上に来ない?」
アリーナが上から手を伸ばす。
クリフトは躊躇いながもその手をとった。

「ほら!あそこ!
鳥の巣があるでしょ?
あれが気になって勉強が手につかなかったのよ」
アリーナの指差す先には確かに巣があって、雛が親鳥を待っていた。
「可愛い、ですね」
「でしょ〜?」
アリーナが雛を見ながら屈託なく笑う。
クリフトの視線の先も知らないで。
「それにしても、よく見つけましたね」
「うん、たまたま見つけたの。
・・・クリフト、なんか元気なかったでしょ?」
「え・・・?」
「部屋に誰もいなくなると寂しそうな顔して。
皆心配してたわよ」
「顔に・・・出てましたか?」
「わかりやすいのよ、クリフトは。
何かあったらなんでも言ってね。
私がクリフトを守ってあげるから」
「・・・アリーナ様、ありがとうございます」
アリーナは何も言わずただ笑った。

非力な自分には無理かもしれない。
でも、この心優しい姫君を自分が守れたらならばどれだけいいだろう。
クリフトはそう思った。




書いてから気付いた。
クリフト高所恐怖症じゃんorz

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